京都ひろくに屋通信10月号
10月に入り朝夕はひんやりとし、日中は過ごしやすくなってきて、やっと夏が終わり秋が来たと感じる季節の変わり目、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今月からは松下に代わり制作を担当しています福宮が書かせていただきます。
今年に入り今まで新型コロナで中止や規模が縮小されていたイベントの多くが再び開催されるようになり、京都の三大祭の一つ「時代祭」も10月22日に三年ぶりに行列が行われました。
時代祭は、平安遷都1100年と平安神宮創建を祝して明治時代より始められました。明治維新から平安時代へとさかのぼりそれぞれに時代を再現した衣装を身につけた行列が12時に京都御苑を出発し烏丸通り、御池通り、河原町通り、三条通りときて、最後に神宮道から平安神宮に到着します。
時代祭行列順路
当日は御池通りから観覧していたのですが、外国の方も多く見受けられ楽しまれているようでした。まだまだコロナ前ほどではないですが、街に活気が戻ってきたのを感じました。
富小路御池の交差点付近より撮影
さて、今回は8月に博國屋より発売しました、納骨ペンダント「小町」の新商品漆塗りの「くろ」の制作工程を取り上げたいと思います。
漆の歴史は縄文時代にさかのぼり、土器の接着などに使われたり、木製品に塗装されたものが各地の遺跡から出土しています。
また、欧米で漆は「Japan」と呼ばれ日本を代表する伝統工芸として知られ、フランスのベルサイユ宮殿には、17世紀に東インド会社によって輸出された日本の蒔絵細工などの漆器が、宝物として今も収蔵されています。
漆は、漆の木に傷をつけた時、そこから分泌・浸出する樹液のことをいいます。
ウルシオールが主成分の天然樹脂塗料であり、接着剤でもあります。また、腐敗防止、防虫の効果もある優れた素材です。
ちなみに、漆が乾くには適切な温度(24℃~28℃)と湿度(70%~85%)が必要で、その環境を作るのに室(ムロ)と呼ばれる大きな木の棚や箱の中に、湿らした布などで湿度を調整したものを使用します。
左が生漆、右が黒漆。
新商品・納骨ペンダント小町「くろ」
まず、納骨部分の穴を開けた、直径1cm、高さ2.9cmのの木地にサンドペーパー(180番、320番、600番の順番)をかけキレイに研ぎます。何も考えず無心になる時間です。
次に木地を硬く丈夫にするため、テレピンで薄めた生漆を全体に塗装し室で乾燥させます。
季節にもよりますが最低でも2、3日は乾燥させます。
塗装後はこんな感じで室に入れます。
漆が乾燥したら空研ぎし、黒漆を薄く塗装し室で乾燥させます。ここで厚く塗装すると垂れてしまうので注意。漆の作業は基本的に研いで塗っての繰り返しになります。
塗った直後は下地が透けています。
漆が完全に乾燥したら今度は1000番くらいの耐水ペーパーで水研ぎをし、再度漆を薄く塗装。この工程を最低4回繰り返します。
研ぐときはあまり下地が出ないように気を付ける。
左:1回目の乾燥したところ。時間が経つと黒くなります。
まだ、表面にざらつきがある。
ホコリが付かないように気を付け塗装する。
回数を重ねると徐々に表面が滑らかになっていきます。
良い感じに塗り重ねされたら、1000番、1500番、2000番、2500番の耐水ペーパーで水研ぎをし、つぎにコンパウンド、最後に呂色磨粉で最終の仕上げの艶上げを行います。この工程で磨きすぎて木地が出てしますと、塗装からやり直しになります。
4種類の耐水ペーパーで表面をならしていきます。
刷毛目などを注意して消していく。
コンパウンドは布などにつけて磨きます。
呂色磨粉は種油と混ぜて素手で磨きます。
表面を綺麗に磨き艶上げが完了したら、金具を付けて完成です。
この作業で失敗すると全てが水の泡なので緊張します。
駆け足で作業工程をご紹介しましたが、如何でしたでしょうか。
この小町の「くろ」「あか」は仲の良い夫と妻をイメージしております。
商品の詳細はこちらからご覧頂けます。
次回は私の通った教室やお店をご紹介しようと思います。
博國屋の手元供養
京都の樹木葬
滋賀県の櫟野寺樹木葬 櫟苑(らくえん)
※櫟野寺には国内最大といわれる十一面観音菩薩坐像を本尊として安置しています。その他にも、重要文化財である計20体のみほとけたちを安置しています。
2016年に東京国立博物館で開催された、初めて20体全てを寺外で展示した「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」では、のべ20万人以上の来場がありました。
興味のある方は拝観されてはいかがでしょうか。
秋の特別拝観
期間:10月19日から11月13日まで
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